

第1章:史上最遅の決着⚾ 夜10時46分の歓喜

記者A「いやぁ、あの試合は本当に忘れられませんね…」
記者B「第107回全国高校野球選手権大会、第4日の第4試合。滋賀代表・綾羽と高知代表・高知中央の一戦、延長タイブレーク、そして史上最遅の午後10時46分決着…!」
この日、阪神甲子園球場は夏の夜の湿った空気に包まれていた。第3試合が雨で67分間中断し、その影響で第4試合は午後7時49分にプレーボール。時間的には“継続試合”になる可能性が高かったが、両校の「最後まで戦いたい」という強い意志が大会本部を動かし、異例の延長10回タイブレークが実施された。
9回裏、高知中央が2アウト満塁まで追い詰められ、綾羽が相手のミスで同点に追いつく。球場全体がざわつき、観客は総立ち、アルプス席の応援団も固唾を飲む。
延長10回表、綾羽は集中力を切らさず一気に4点を奪う猛攻。裏の高知中央も意地を見せて2点を返すが、反撃はそこまで。最終スコア6-4、綾羽が春夏通じての甲子園初勝利を飾った。
第2章:ウイニングボールに込められた想い🧡

試合後の整列で、思わぬ“ドラマ”があった。
綾羽3年生の浜野廉選手は試合終了時、手にしていたボールを球審に返そうとした。しかし、球審は静かにこう言った。
球審「そのまま持っておきなさい」
浜野選手は驚きと感謝の笑みを浮かべ、ボールをユニホームのポケットにしまった。
「まさかいただけるとは思わなかった。このボールは野球部だけじゃなく、綾羽を応援してくれた全員でつかんだ記念のボール。監督に渡したいです」
千代純平監督も胸を熱くしていた。
「これまで甲子園を目指して挑戦し続けた先輩たちがいたからこその初勝利。人生で初めて味わう特別な日になりました」
このウイニングボールは、選手たちの努力と地域の支え、そして球場全体の空気を刻んだ“宝物”となった。
第3章:「野球の神様」に見放された過去からの再出発⛅

この日のもう一つの注目は、青森県代表・弘前学院聖愛だ。
4年ぶりの甲子園出場を果たした彼らは、1年前の苦い記憶と向き合い続けてきた。
2024年夏、青森山田との県大会決勝。6回まで2点リードしていた聖愛は、簡単なフライを落とす痛恨のミスから流れが崩れ、逆転満塁ホームランを浴びた。それでも最終回にチャンスをつかむが、同点打と思われた一打がフェンスの隙間に挟まり、ルール上の二塁打に。1点差で涙をのんだ。
当時の選手、そして監督までもが口をそろえて言った。
「あの時、“野球の神様”なんていないと思った」
しかし2025年、同じ舞台に戻ってきた。チームはその悔しさを力に変え、再び全国の頂点を目指す。
選手名鑑(前半)
- 芹川丈治(3年/投手):絶対的エース。右打者へのクロスファイヤーと4種の変化球が武器。県大会準決勝・決勝で196球を投げ抜いた。
- 成田翔音(3年/捕手):遠投100mの強肩。派遣経験で成長。
- 原田琉生(3年/一塁手):勝負強い4番。決勝で適時打。
- 田中柊真(2年/二塁手):守備の名手で送球の強さが光る。
- 澤田蓮(2年/三塁手):打率4割超えのポイントゲッター。
第4章:弘前学院聖愛 選手名鑑(後半)🔥

- 丸岡侑太郎(3年/遊撃手):県大会打率4割7分4厘。兄も甲子園経験者。
- 菅野裕眞(3年/左翼手):1番打者として粘り強い安打製造機。
- 今大雅(3年/中堅手):背番号17から8へ昇格。長打力と守備範囲が魅力。
- 一戸淳弥(3年/右翼手):決勝打で甲子園へ導いたクラッチヒッター。
- 田崎光太郎(2年/二塁手・主将):右ひざの大けがを乗り越え、ベンチから指揮。
さらに控えにも緩急自在の左腕・田中志、代打の切り札・湊鵬真、ユーティリティの奈良文翔、救援の切り札・前田一樹など、厚みのある布陣が整う。
第5章:横浜、花巻東、そして北海…夏の主役たち🌟

**横浜(神奈川)**は春の選抜優勝校らしい安定感で敦賀気比に完封勝利。織田翔希(2年)が雨天中断を経ても集中を切らさず9回無失点。
**花巻東(岩手)**は智弁和歌山を4-1で撃破。エース萬谷堅心(2年)が156球の力投。筋肉質な体格はOB菊池雄星や大谷翔平の写真を見て鍛えた成果で、捕手・高橋蓮はベンチプレス110kg、金野投手も85kgを上げる“マッスル集団”化が進む。
第6章:北海のルーキー右腕・森健成💨

南北海道代表・北海には、最速144キロの1年生右腕・森健成がいる。
大会期間中はホテル暮らしで1日1kg以上の米を食べ、体重を10日間で5kg増やし、球威がアップ。初戦の東海大熊本星翔戦でのデビューに注目が集まる。
第7章:広陵高校アルプス席の異変🪑
8月7日の広陵 vs 旭川志峯戦。吹奏楽部とチアが不在の応援席は静寂に包まれていた。背景には暴力事案発覚とコンクール日程が重なったことがある。代わりに100人超の野球部員が声を張り上げ、スタンド全体に迫力を与えていた。
第8章:青藍泰斗ナインへのエール🎶

作詞家・売野雅勇氏が栃木代表・青藍泰斗に向けて「何度も校歌を歌い続けて決勝まで行ってください!」とメッセージ。
校歌には「美しいものを探しながら生きよう」という一節があり、選手たちの夢を象徴している。
第9章:2025年夏の甲子園の熱🔥

- 史上最遅決着(綾羽 vs 高知中央)
- 昨年の雪辱を誓う弘前学院聖愛
- 筋トレ進化の花巻東
- ルーキー右腕・森健成
- 広陵高校応援文化の変化
記者A「甲子園はスポーツ大会以上の“人間ドラマ”の舞台ですね」
記者B「ええ、地域・学校・個人の物語が交差します」
終章:夏の記憶は、ボールと共に📷

綾羽の浜野選手が受け取ったウイニングボール。それは“努力・支え・感謝”の象徴だった。
この夏もまた、グラウンドとアルプス席で多くの物語が生まれ、来年の夏へと引き継がれていく。
コメント